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地域で数少ない「日帰り腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術」を導入

【外科・消化器外科部長:原 豪男】

消化器外科部長・原 豪男先生に聞く、新しい取り組みとその背景

原先生、今回は「日帰り腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術」についてお話をうかがいます。
新しく導入されたと聞きましたが、いつから始まったのですか?

はい。当院では2025年6月から、65歳未満で腹部の大きな手術歴がなく、重い持病のない方を対象に「日帰りの腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術」の予約を開始しました。

初診・手術・術後診察の3回の通院で治療が完了できるのが大きな特徴です。
仕事でお忙しい現役世代の方や、できるだけ早く日常生活に戻りたい方にとって、受けていただきやすい体制になっています。

この地域では、日帰りの対応ができる病院はまだ少ないと聞きます。

そうですね。貝塚市をはじめ、岸和田市、熊取町、泉佐野市、阪南市などの泉州地域では、鼠径ヘルニアに対する日帰り手術を行っている医療機関は限られています。

当院には、内視鏡外科学会の技術認定医や麻酔科の専門医が複数在籍しており、高い技術とチーム医療で安全な手術が可能です。また、内科・婦人科・泌尿器科との連携や入院設備も整っており、日帰り手術後のサポートも万全です。

不安のある方には「週末入院プラン(金曜日入院・手術、週末もしくは月曜朝に退院)」といった柔軟な対応もしています。

そもそも、鼠径ヘルニアとはどんな病気なのでしょうか?

鼠径ヘルニア、いわゆる「脱腸」は、足の付け根にある鼠径部の組織が弱くなり、お腹の中の臓器(主に腸)が外に飛び出してくる病気です。

長時間立っていると太ももの付け根が膨らんでくる、横になると引っ込む、片方の陰嚢が腫れてくるといった症状がよく見られます。
違和感や痛みがある方は「嵌頓(かんとん)」という状態になっている可能性があり、これは腸が挟まって戻らなくなる非常に危険な状態です。激しい痛みや嘔吐などを伴い、緊急手術が必要になることがあります。

初診当日に問診・診察・CTなどで診断可能ですので、気になる症状があれば早めにご相談ください。

治療には手術が必要なんですね。どのような方法で行われるのでしょうか?

はい、鼠径ヘルニアは自然には治りませんので、治療には手術が必要です。

方法としては主に、鼠径部を直接切開する「鼠径部切開法」と、腹腔鏡を用いる「腹腔鏡手術」の2種類があります。当院では全身麻酔のもと、腹腔鏡下で行うヘルニア修復術(TAPP法)を採用しています。傷口が小さく、術後の痛みも軽いため、回復が早く、見た目もきれいに仕上がるのが特徴です。

手術では「メッシュ」と呼ばれる医療用のネットで弱くなった部分を補強し、再発を予防します。メッシュは身体に残るものですので、術前の診察から術後フォローまで丁寧に対応しています。

最後に、地域の皆さまへのメッセージをお願いします。

鼠径ヘルニアは一見、軽い症状に見えることもありますが、放っておくと日常生活に大きな支障をきたす場合もあります。

当科では「ただ手術をする」だけではなく、術前評価から術後のサポートまで一貫した質の高い医療を心がけています。多職種の連携体制、緊急時の入院対応など、地域の中核病院としての強みを活かし、安全・安心な日帰り手術を提供しています。

鼠径ヘルニアでお悩みの方、日帰り手術に不安のある方、あるいは以前に手術を受けたが違和感が残っているという方も、どうぞお気軽にご相談ください。

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