【市立貝塚病院 病理診断科部長:山﨑 大】
病気の診断や治療の方針を決めるうえで、重要な役割を果たす「病理診断科」。
今回は、普段あまり知られることのないこの診療科の仕事について、病理医の先生にお話を伺いました。
主に、検査で見つかった「異常が疑われる部分」の組織を顕微鏡で観察し、それががんなのか、良性の腫瘍なのか、あるいは炎症なのかを診断しています。
このようにして組織を調べることを「生検(せいけん)」といいます。
はい。手術で取り出された臓器や組織をさらに詳しく調べ、がんの種類や広がりを確認します。これにより、手術後の治療方針(薬の使用や経過観察など)を決めるための重要な情報が得られます。
関係しています。遺伝子検査の対象となる組織を選んだり、検査に適しているかどうかを判断したりするのも、病理医の大切な仕事です。必要な検査会社への提出も行います。
ご遺族の了承を得たうえで、病理解剖を行うことがあります。病気の原因がはっきりしない場合や、典型的でない症状だった場合に、死因を明らかにするために重要な役割を果たします。
当院は250床の中規模病院ですが、年間5,000件を超える診断を行っています。特に婦人科系のがんや乳がんの診断数が多く、大学病院と同程度の水準で診療に貢献しています。
はい、非常に慎重な判断が求められます。画像検査や血液検査と照らし合わせて、一致しない場合は再度見直すこともあります。時には、特殊な染色を使って診断を補強することもあります。
病理診断が臨床診断と大きくずれてしまうと、治療の方向性に影響が出る可能性があります。だからこそ、必要に応じて何度も見直し、複数人で確認しながら慎重に診断を行っています。
あります。がんの診断中に、別の病変が偶然見つかることもあります。そうした場合には、他の検査科と連携し、さらに詳しい調査が行われます。
私たちは患者さんと直接お会いすることはありませんが、すべての検体を、身内のものと思い、大切に向き合っています。日々の仕事の中で、医療を裏から支える責任と誇りを感じています。
私も年齢的にベテランの域に入りました。これからは、若い病理医の育成にも力を入れていきたいと思っています。自分の経験や姿勢を伝えて、次世代の医療を支える人材を育てていくことが目標です。
「病理診断」は普段目にすることのない診療科かもしれませんが、すべての患者さんの診断や治療の質を左右する大切な分野です。これからも地域の皆さまに信頼される医療を支えるため、日々研鑽を重ねてまいります。