近年、がん治療は目覚ましい進歩を遂げていますが、決してなくなるわけではありません。泌尿器科にお越しになる患者様の多くは、尿路感染症や排尿障害などの良性疾患でありますが、当院の掲げる、がん診療に重点を置いた診断治療を当科では実践して、腎・腎盂尿管・膀胱・前立腺・精巣などの泌尿生殖器がんや後腹膜悪性腫瘍に対する、手術・放射線・化学療法を中心としたがん治療を積極的に行っています。
また、2024年4月より、泉州 前立腺・排尿ケアセンターとして、前立腺疾患(前立腺がんや前立腺肥大症など)や過活動膀胱・神経因性膀胱・腹圧性尿失禁のような排尿障害などでお困りの患者様をケアするセンターを設立いたしました。それ以外にも、尿路感染症に対する治療や、尿路結石症に対するレーザー治療、副腎腫瘍と上皮小体(副甲状腺)腫瘍に対する内分泌外科治療、停留精巣や膀胱尿管逆流症のような小児先天性疾患の手術治療にも対応しております。
泌尿器科手術は従来から内視鏡手術が中心で、膀胱鏡・尿管鏡・腹腔鏡手術を積極的に行っています。2019年度~2023年度までの手術内容については別掲します(手術室使用のみ)。2023年の手術内容に、新しく前立腺肥大症に対する前立腺水蒸気治療(WAVE)、過活動膀胱の治療としてボトックス注入療法、前立腺がん放射線治療における金マーカー・スペーサー留置術、MRI融合前立腺生検システムが加わって、手術件数も飛躍的に増えてきています。また、2024年年1月からは、前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術をダ・ヴィンチシステム(INTUITIVE社製)によるロボット支援手術にて開始しており、地域の方々に多くの先進医療を提供できるように日々邁進しております。すでに、腎がんに対してもロボット支援手術を施行開始しており、今後は膀胱がんなどへの拡張を計画しております。 なお、当院は、透析設備を有していないことから、慢性腎不全における腎移植・透析関連の入院治療は行っていません。したがって、腎不全の診療に関しては、近隣の透析施設と連携をとっております。
男性のがんである前立腺がんは最も罹患率の高いがんですが、生存率の高いがんです。前立腺特異抗原(PSA)検査の普及により早期に発見される症例が増えているからだけでなく、手術や放射線治療の進歩、および進行がんでも内分泌療法が奏功するためです。当院では、まず診断の精度を高めるため、MRI融合(フュージョン)前立腺生検(富士フィルム社製)法を2023年11月より導入しました。治療においては、先述したダ・ヴィンチシステムによるロボット支援手術や高精度放射線治療を中心に、局所限局または局所進行がんの根治的治療法として、多くの患者様に治療を行っております。また、放射線療法は当院が行っている高密度放射線照射や、2018年4月より保険診療が可能となった重粒子線療法などの治療を受ける患者様も増え、その合併症として隣接臓器である直腸の放射線障害は避けられません。そのための対策として、金マーカー留置(放射線焦点固定のため)やスペーサー留置(直腸被ばく軽減のため)なども開始しました。
悪性度の高い局所進行がんや発見時に骨または他臓器に転移のある方の多くは数年後にホルモン治療抵抗性再燃がんになります。近年、新しいホルモン療法、化学療法、遺伝子診断による治療が進歩し、このような再燃がんに対しても有効な抗がん剤治療があります。様々な状況のがんに対する診療を行っております。このような患者様に関して、泉州 前立腺・排尿ケアセンターへご紹介・ご相談ください。
近年増加しているがんの一つですが、がん全体の約2%となっています。腎がんの約80%は淡明細胞型腎細胞がんという種類で、人間ドックや他疾患観察中の超音波・CT検査により偶然発見される早期がんが増えています。最も良い治療法は手術による腎摘除術で、根治的腎摘除術のほとんどは腹腔鏡手術で行います。また4cm以下の小さながんであれば、腎機能温存の目的で部分切除術を第一選択として薦め、多くの症例はロボット支援腹腔鏡下部分摘除術を行っております。もちろん当院では、ダ・ヴィンチシステムによるロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を採用しております。根治切除不能または転移性の腎がんに対しては、分子標的薬や新しい免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)を行います。近年、このような免疫療法の進歩が著しく、生存率が向上しています。なお、小径腎がんに対する凍結療法という治療もありますが、当院では対応しておりません。
膀胱がんの多くは表在性乳頭状がんで経尿道的腫瘍切除術(TUR-BT)で治療可能です。しかし表在性膀胱がんは、膀胱内で再発しやすく、再発頻度の高い方・多発性の方にはBCGの膀胱内注入療法を行い、再発防止を計ります。また表在性の中でも上皮内がんの多くはBCG膀胱内注入療法により膀胱温存が可能です。局所浸潤性膀胱がんの標準的治療は原則膀胱全摘術ですが、術前もしくは術後に全身化学療法を追加することがあります。膀胱全摘術にともなう尿路変更術では主に回腸導管造設術,自然排尿型尿路変更術を行います。また膀胱全摘術ができない方・希望されない方にはTUR-BT・化学療法・免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)・放射線療法などを組み合わせた集学的治療による膀胱温存治療にも取り組んでいます。患者さまの年齢、体力、合併症、適応、QOLに応じた治療を選択します。
腎盂・尿管がんも、膀胱がんと同じくほとんどが尿路上皮から発生しますが、腎盂・尿管は膀胱に比べて壁が薄く、特に悪性度の高いがんは早期に浸潤・転移をきたしやすいのが特徴です。希少がんであり泌尿生殖器がんのなかで最も予後不良ながんです。切除可能であれば原則腎尿管全摘除術を行います。腹腔鏡下での手術を中心に行っています。進行がんや転移を伴う根治切除不能な進行がんでは、一次治療として抗がん薬治療、二次治療として免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)、三次治療として抗体薬物複合体治療を行っております。
精巣腫瘍とは精巣(睾丸)に生じる腫瘍で、20~30代の男性に大きなピークがありますが、小児期にも小さなピークがある腫瘍です。精巣腫瘍のほとんどは精巣がんであり治療が必要になります。診断は、超音波検査やMRIで精巣腫瘍の状態を確認し、精巣がんが強く疑われる際は外科的治療として、高位精巣摘除術を行います。かつては緊急手術として行われていましたが、昨今は治療法の進歩に伴い、予定手術として行われるようになりました。術前後に施行した腫瘍マーカーの採血;HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、AFP(α-フェトプロテイン)や、LDH(血清乳酸脱水素酵素)を行い、CTやFDG-PET、MRIなどと併せて病期診断をします。治療には、手術で摘出した病理診断が重要です。がんの広がりや組織タイプと病期分類と併せて、薬物療法(抗がん薬)治療が必要な場合と、放射線治療が必要な場合を診断します。
腎・尿管の結石を上部尿路結石といいます。膀胱から尿道先端までの結石を下部尿路結石(多くは膀胱結石)といいます。
上部尿路結石症の治療は、外科的治療の3本柱である体外衝撃波結石破砕術(ESWL)による低侵襲手術,経尿道的腎尿管結石砕石術(TUL)や経皮的腎尿管結石砕石術(PNL)による内視鏡手術があります。当院は開設当時より、「尿路結石治療は泉州地区の貝塚病院」として、これまで予防や治療に取り組んでまいりました。近年、ESWLが中心の上部尿路結石治療は大きく治療方法が変わってきました。内視鏡を用いた、レーザーによる砕石術が中心となってきました。特に、一度の治療では完治しにくい大きい珊瑚状腎結石や上部尿管結石に嵌頓する大きな結石に対しては、砕石・排石効率を高め、手術治療回数を減らす目的でTAP(TUL・PNL同時併用手術)を施行しています。レーザーも近年進歩が目覚ましく、当院ではホルミウムレーザーを用いております。今後、さらにダスティング(石を細かく粉砕すること)能力が長けているレーザーを導入予定です。
排尿の質を考慮した薬物療法を中心に行いますが、前立腺肥大症は良性疾患でありますが、薬剤抵抗性の大きな前立腺肥大症や尿道閉塞の強い症例は手術を行います。従来、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)、経尿道的前立腺核出術(TUEB)を中心に行っていましたが、さらに低侵襲の前立腺水蒸気治療(WAVE)を2023年4月より導入しました。WAVEはこれまで手術が不可能であった多くの合併症を有する患者様や他疾患の治療で治療継続が必要な患者様においても、安心して受けられる手術です。ただし、適応に関しては、術前に排尿機能の検査をして判定させていただいております。
各医療機関の皆様および患者様へ、前立腺肥大症などの前立腺疾患や排尿障害に関しては、泉州 前立腺・排尿ケアセンターへご紹介・ご相談くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
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腎 |
腎摘除術(うち腹腔鏡) | 8 | 8 | 4 | 3(1) | 5(3) |
腎部分切除術(うち腹腔鏡) | 5 | 1 | 7 | 7(5) | 6(4) | |
腎尿管全摘術(うち腹腔鏡) | 8 | 12 | 8 | 15(10) | 4(4) | |
経皮的腎砕石術 | 2 | 10 | 3 | 4 | 7 | |
体外衝撃波砕石術(ESWL) | 68 | 38 | 22 | 17 | 16 | |
経皮的腎嚢胞穿刺術 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | |
経皮的腎瘻造設術 | 5 | 6 | 6 | 0 | 6 | |
副腎摘出術 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | |
尿 管 |
経尿道的尿管砕石術 | 33 | 60 | 77 | 71 | 47 |
尿管膀胱新吻合術 | 0 | 0 | 3 | 1 | 1 | |
経尿道的尿管 ステント留置術 |
81 | 84 | 143 | 144 | 154 | |
膀 胱 |
膀胱全摘術 | 0 | 2 | 1 | 1 | 3 |
膀胱部分切除術 | 0 | 0 | 3 | 2 | 3 | |
回腸導管造設術 | 0 | 3 | 1 | 1 | 3 | |
経尿道的膀胱腫瘍切除術 | 111 | 112 | 100 | 102 | 93 | |
尿膜管腫瘍切除術 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | |
経尿道的膀胱砕石術 | 21 | 15 | 16 | 10 | 19 | |
ボトックス注入療法 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | |
前 立 腺 |
前立腺全摘術 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
被膜下前立腺摘除術 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | |
経尿道的前立腺切除術 | 22 | 23 | 22 | 17 | 13 | |
経尿道的前立腺水蒸気治療 | 0 | 0 | 0 | 0 | 44 | |
前立腺生検(うちMRI融合生検) | 100 | 71 | 82 | 95 | 102(11) | |
金マーカー挿入術 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1 |
|
スペーサー挿入術 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | |
尿 道 |
内尿道切開術 | 1 | 0 | 4 | 0 | 11 |
TVT | 2 | 2 | 3 | 2 | 3 | |
陰 嚢 ・ 陰 茎 |
精巣固定術 | 2 | 4 | 5 | 0 | 4 |
高位精巣摘除術 | 4 | 2 | 4 | 6 | 6 | |
陰嚢水腫根治術 | 5 | 9 | 9 | 10 | 5 | |
被膜下精巣摘除術 | 2 | 4 | 7 | 0 | 2 | |
包茎手術 | 7 | 4 | 9 | 4 | 5 | |
他 | 上皮小体摘除術 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 |
後腹膜腫瘍摘除術 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | |
その他 | 40 | 39 | 30 | 26 | 32 | |
合計 | 535 | 513 | 577 | 540 | 604 |
のせ かずひろ
能勢 和宏
副院長、泌尿器科主任部長、前立腺・排尿ケアセンター長
資格:
・日本泌尿器科学会専門医 / 指導医
・日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
・日本移植学会 腎移植認定医
・日本臨床腎移植学会 腎移植専門医
・腎代替療法専門指導士
・難病指定医
・大阪泌尿器科臨床医会幹事
あどみ しょうご
安富 正悟
泌尿器科副部長
資格:
・日本泌尿器科学会専門医 / 指導医
・日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会ロボット支援手術プロクター
・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
なかやま たかひと
中山 尭仁
泌尿器科副医長
もりた つよし
森田 剛史
泌尿器科医員
休診情報はありません。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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1診 | 能勢 和宏 | 安富 正悟 | 能勢 和宏 |
森 康範 |
安富 正悟 | 初診・急患 |
2診 |
手術日 |
手術日 | 中山 堯仁 |
手術日 |
中山 堯仁 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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1診 | 能勢 和宏 | 安富 正悟 | 能勢 和宏 | 安富 正悟 | ||
2診 |
手術日 |
森田 剛史 | 中山 堯仁 |
手術日 |
手術日 |
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