当科は、画像診断部門と放射線治療部門からなり、画像診断部門では、128列マルチスライスCTや3.0T(テスラ)MRIなどを用いた画像診断のほか、フラットパネル血管造影装置を用いた画像下治療(IVR)を行っています。
放射線治療部門では、高精度放射線治療装置を導入し、がんに対する放射線治療を行っています。
また、当科は、乳がん高度検診・治療センターのチームスタッフとして大きな役割を担い、乳房画像診断や乳腺MRI・乳腺CTなどの術前診断も当科で担当しています。
画像診断部門
X線写真・CT・MRI・超音波検査(エコー)・マンモグラフィなど、体に傷をつけずに体内を診る画像機器は年々精度を上げ、画像診断の質が医療の質の向上に重要な役割を果たしています。
常勤の放射線診断専門医に加えての画像診断のさまざまな分野のエキスパートである専門医が、非常勤嘱託として読影にあたっています。
=院内デジタル画像・レポート配信=
すべての検査画像と読影レポートは、デジタル管理・保管・配信されています。病院内のすべての電子カルテ端末から、CTやMRI画像データを用いた三次元画像の作成や作成済み画像の閲覧・編集が可能で、画像データをタイムリーに効果的に使えるシステムを導入しています。
IVR(インターベンショナルラジオロジー:画像下治療)
画像機器の画像を疾病の診断や治療法の検討に使用するだけでなく、治療や検査に活用するのがIVR(画像下治療)です。
血管造影像やX線、超音波画像などで確認しながら、血管内にカテーテル(細い管)を入れて治療を行います。
傷口が小さく患者さまへの負担が少ないため、急速に応用範囲が広がっています。
当院では平成24年の消化器センター開設も加わり、腹部領域の血管造影およびIVR検査を中心に行っています。
放射線治療部門
放射線治療は、手術・化学療法(抗がん剤)と並ぶ、がん治療の3つの柱の一つです。放射線治療は、治療の中心となるだけでなく、手術の補助的に使用されるなど、他の治療と並行して実施されることもあります。
がんを切らずに治療する放射線治療は、身体への負担が少なく、治療の選択肢を広げるだけでなく、臓器の機能温存の可能性も広げています。
高精度放射線治療装置 リニアック
平成23年より、より精密で高度な放射線治療を可能にする「高精度放射線治療装置リニアック 米国バリアン社 CLINAC iX」に更新しました。乳がん、前立腺がんをはじめ、がん治療に成果をあげています。
放射線治療の精度管理を担う放射線医学物理室
平成21年度からは、放射線治療の精度管理を担う「放射線医学物理室」を設置しています。
日本ではまだ数少ない放射線治療医や医学物理士の他、放射線治療専任の診療放射線技師も揃い、高精度な機器をより効果的に安全に安心してご提供できるよう取り組んでいます。
=放射線治療を担うスタッフ=
- 放射線治療医
診察所見や検査結果から、放射線治療の方針や治療計画を立てます。
治療終了後も定期的に診察し、必要な処置を行います。
- 医学物理士
治療計画を立てたり、医師の立てた治療計画をチェックします。
照射位置や線量など、治療装置の精度管理も行います。
- 診療放射線技師
実際に患者さまを治療装置に寝かせ、放射線を照射します。
正しい位置に照射されるよう、皮膚に印をつけたり固定具作成も行います。
- 専従看護師
安心して放射線治療を受けることができるようにサポートを行います。
わからないことや不安に思っていることはお気軽にご相談ください。
機器紹介
画像診断装置
- 128列マルチスライスCT
CTはComputed Tomographyの略で、コンピュータ断層撮影装置のことです。
被写体の周囲からX線を照射し、人体を透過した投影データをコンピュータで画像再構成し断層像を得る装置です。
当院では、2021年にCT機器を更新し、2種類のX線(Dual Energy)を利用して画像化するこの最新 CT では、高画質・高精度な様々な画像を得ることができ、診断の迅速化や診断精度の向上につながることが期待されています。
また、超低線量での撮影が可能で撮影時の被ばく線量を低減するほか、造影剤使用量の低減・検査時間の短縮など、被験者に優しい検査ができます。
- 3.0T(テスラ)MRI
MRIはMagnetic Resonance Imagingの略で、磁気共鳴画像診断装置のことです。強力な磁場と電波を使って 人体の水素原子核の状態をみることで画像化します。
MRIを使って、カテーテルを挿入する血管造影検査のように体を傷つけることなく、短時間で精度の高い血管の画像を見る検査(MRA)も可能です。
当院では、2017年にMRI機器を更新し、従来の1.5T(テスラ)MRIに比べ、より高画質な画像を得ることができるようになりました。今までの装置ではよく見えなかった細かな部分まで見ることができるため、微小な病変を発見しやすくなり、早期発見、早期治療につながります。また、1.5T(テスラ)MRIでは困難であった関節軟骨部の変性が検出できるなど、有用な分野が広がっています。
- 血管造影X線診断装置
普通のX線写真では写らない血管の状態を、カテーテルという細い管を血管に挿入し、造影剤を注入して調べる 検査のための装置です。検査だけでなく、ステント挿入による血管の拡張術や、塞栓療法、薬剤注入などの治療(画像下治療:IVR)にも使われています。
- マンモグラフィ装置(トモシンセシス機能搭載)
乳房専用のX線撮影装置です。
当院では、50μm直接変換方式フラットパネルディテクタを搭載したデジタルマンモグラフィ装置と、50μmFCR方式デジタルマンモグラフィ装置を用いて撮影を行います。50μm直接変換方式フラットパネルディテクタは、直接変換方式では現在の世界最小画素サイズで、高精細で低ノイズの画像を生成します。
- トモシンセシス機能
トモシンセシスとは「デジタルマンモグラフィ3D再構成断層撮影」のことです。
1回の撮影でX線管球が移動しながら低線量のX線をパルス状に照射し、得られた画像データを再構成して断層像を生成します。
乳房を1mm間隔の断層面で観察することができるため、従来のマンモグラフィでは乳腺の重なりのために発見が難しかった病変の観察ができ、より詳細な検査が可能となります。
=その他画像診断機器=
- FPD搭載一般撮影装置(3台)
- ポータブルX線撮影装置(2台)
- X線骨密度測定装置
- 超音波装置 など
- 高精度放射線治療装置リニアック
放射線治療には、切らずにがんを治療するため痛みがない、抗がん剤のような全身への副作用が出にくいなどのメリットがあります。
一方、課題となるのは、放射線による正常な細胞への損傷をいかに抑えるかです。当院の導入した「高精度放射線治療装置リニアック」は、最新の高度な技術を駆使し、より効果的で副作用の少ない、より安全な治療を可能にしています。
高精度放射線治療装置の機能
- 定位放射線照射(SRS・SRT)
=正常細胞への照射量を減らし、がん細胞に多量に照射する技術です=
多方向からの放射線照射で、ピンポイントでがん細胞に放射線を集中させる方法です。照射器や寝台を動かすことで、多方向からの照射を行います。CTなどを利用した3次元画像情報が使われており、高度なシミュレーションシステムが複雑な照射を可能にしています。ピンポイントで集中させるためには、照射する位置にズレがあってはなりません。そこで、型や固定具などを用いて体を固定して行います。
- 原体照射(3D-CRT)
=がん細胞の形に合わせて、照射するビームの形を変える技術です=
CTなどで得られた3次元の画像情報を利用し、がん細胞の形に合わせて照射する放射線ビームの形を作ります。
【多分割絞り装置:多分割コリメータ(MLC:マルチリーフコリメータ)】
コリメータは、放射線ビームの形を作る装置です。
マルチリーフコリメータは、スリットを自在に動かすことで、がんの形に合わせた照射を可能にします。
導入している高精度放射線治療装置のスリットの厚みは5mmと細く、より精密な形状が作れるようになりました。
誤差±0.2mm以下の高精度できめ細かな照射ができるだけでなく、40cm×40cmの広い照射野を持っています。
- 画像誘導放射線治療(IGRT)
=治療計画時と治療時の照射位置のズレを修正する技術です=
放射線治療において重要なのは、正しい位置に照射することです。数回に分けて治療が行われる場合には、治療計画時の画像とズレがないように、毎回照射位置を調整しなければなりません。その調整にはミリ単位の精密さが要求されます。
画像誘導放射線治療(IGRT:image-guided radiotherapy)は、高精度放射線治療装置に搭載した撮影装置による治療直前の画像情報をもとに、位置誤差を補正しながら正確に治療を行う技術です。
- 治療寝台上(患者さまが治療を受ける状態)で治療位置の調整を行います。
- 直交した2方向からX線撮影することで、3次元的な位置合わせを行います。
- 回転撮影することでCT画像の撮影も可能です。X線では見えにくい組織もより正確な位置合わせができます。
- 画像をコンピュータで解析してズレが確認された場合、治療寝台位置を修正して、適切な位置で放射線照射を行います。
- 日々の放射線治療をどの位置で行ったかを記録として残すこともできます。